食物繊維(ファイバー)

ファイバー

食物繊維はどれだけ摂ればいいのか?

それではみなさんに訊きます、1日にどれぐらい食物繊維を摂っていますか?
よかったら自身の食事で実際に調べてみてください、きっとかなり少ないはずです。

日本人成人(18 歳以上)の食物繊維の平均摂取量は約14gです(平成30・令和元年国民健康・栄養調査)。1950年頃は一日20gを超えていましたが、いわゆる生活の欧米化により、肉や乳製品をたくさん摂取するようになりました。言うまでもなく、動物性食品にはほとんど食物繊維が含まれていません。あわせて穀類・イモ類・豆類の摂取量が著明に減少…、食物繊維不足の理由、納得できますよね。

現在では日本人ほぼすべての人が大幅に不足しています。厚労省が策定する「日本人の食事摂取基準」も指摘しています。つまり日本人のほぼ全員が、病気予防や健康寿命延伸のチャンスを逃して大損していることを意味します。

ちなみに厚労省が定める食物繊維の理想摂取量は(世界標準もほぼ同じです)25g/日以上です。
大事なポイントは 25gではなくて25g以上 ということなのです。

細かい話ですが…

「日本人の食事摂取基準2020年版」では24g/日以上でしたが

「日本人の食事摂取基準2025年版案」ではなぜか25g/日以上となっています。

…まぁどちらでもいいのですが  (笑)

「25g以上」…、それには多くの根拠があります。複数の医学論文(メタ・アナリシス)が、健康への利益を考えた場合、少なくとも 1 日当たり 25g/日以上の摂取が望ましいと示唆しているためなのです。
※メタ・アナリシス;厳密に分析して結果を出している数多くの医学論文を、さらにまた分析しなおして結論を導き出した医学論文のことで、一般的な医学論文よりエビデンスレベルが高いとされています。

その一部(下記)をごく簡単に要約しますと…、
・Lancet. 2019; 393: 434-445
・Diabetes Care. 2019; 42: 755-766.
・Am J Clin Nutr. 2022; 116: 953-969.

25g以上の摂取で、体重、血中総コレステロール、LDL コレステロール、トリグリセライド、収縮期血圧、 HbA1c空腹時血糖で有意な改善が認められ、生活習慣病の発症率や死亡率が有意に低下することが分かりました。つまり、心筋梗塞、脳卒中、2型糖尿病、乳がん、胃がん、大腸がんなどの発症リスクが有意に低下することが示されたんです。

…余談ですが、医学論文誌Lancet(ランセット)は世界で1,2位を争う超有名な医学論文誌で、この論文(Lancet. 2019; 393: 434-445)も超有名です、よかったら読んでみてください、読むと思わずファイバーをたくさん摂りたくなりますよ。 (笑)

この医学論文も有名です。
・JAMA Oncol.2018; 4: 71-74

データの一部を紹介しますと…、図の左(A)が大腸がんの死亡率、右(B)が総死亡率です。太い実線をみてください、(A)(B)いずれもおおよそ右下がりですね…つまり食物繊維の摂取量が多いほど死亡率が下がる。で、もう1つ見ていただきたいのがその摂取量です、日本人の平均値14gだと、ほとんど死亡率が低下しないという点なのです。さらに総死亡率の方(B)をみていただくとよくわかりますが、25g以上摂取している人は総死亡率が6割も低下するんです。

[すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢]羊土社から引用

日本のJPHC(国立がん研究センター)も同じ主旨の論文を発表しています
・Am J Clin Nutr. 2020; 111: 1027-1035.

[すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢]羊土社から引用

確かに食物繊維の摂取量が多い人ほど男女ともに死亡リスクは低くなっていますが、残念なのは、多い人の摂取量が、たった16-17gなんですね、もう少し多いグループも作ってほしかったと思います。そうすれば日本人のデータでももっと差が出たはずですね。

有名どころの医学論文データをいくつか紹介しましたが、同じような論文は山ほどありますので、興味のある方はPubMedでキーワード検索してみてください。
(キーワードは「fiber」、「mortality」などなど)